目次
【概要】
19世紀末、アルビオン王国の王立航空軍、通称空中艦隊の登場は世界の勢力図を一変させた。ケイバーライトを独占するアルビオン王国はこの空中艦隊を擁して、ローマ帝国以来の覇権国家となった。しかし革命によりアルビオン王国は東西に分断。ロンドンの壁によって王国と共和国に分かれた。以来ロンドンは各国のスパイが暗躍する戦争の最前線となった。
※(新旧に分かれた。新体制が共和国、旧体制が王国側)
【人物図】(2話 case1時点)
王国(旧体制)『東側』 女王陛下 ノルマンディー公 シャーロット ベアトリス
『ロンドンの壁』ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
共和国(新体制)『西側』 コントロール(機関)アンジェ ドロシー
日本『中立』 堀川公 ちせ
【人物紹介】
アンジェ。17歳。
本名シャーロット。シャーロット(アンジェ)と瓜二つの容貌をしており
ロンドン革命の際、混乱のさなかに二人は立場が入れ替わってしまう。
革命によって血は流され、両親を失った。
以降、スパイ養成所での訓練を経て今に至る。
シャーロット(プリンセス)。17歳。
本名アンジェ。
王国の姫として生きる為、入れ替わったという事実を隠し通すため
血のにじむような努力と訓練で教養と品格を身につけ、今日に至る。
アルビオン王国王位継承権4位を有する。
ドロシー。20歳(※成人)。
本名デイジー。
優秀な機械技師だった父が革命(戦争)で腕を失って以来、酒と暴力を振るう毎日に
母は姿を消した。後には彼女も家を飛び出しスパイの道に進んだ。
アンジェとはスパイ養成所の同期。
ベアトリス。16歳。
男爵家の娘として生まれるが、父親が機械狂いであり、
終いには実の娘にまで手をかけ、機械仕掛けの体にされてしまう。
どんな声色をも再現してしまう声帯を有する。
同じ学園で暮らすシャーロットに惚れこみ信奉している模様。
ちせ。16歳。
(堀川公「王国と共和国、信頼できるパートナーはどちらか我々は選ばなくてはならない」)
協定を結ぶために日本から派遣された少女(もののふ)
五話ではノルマンディー公の差し金でシャーロットを討とうとした十兵衛(実の父)を自らの正義の心から殺してしまう。
また「一宿一飯の恩」と銘打って主君の命に背いてまでアンジェ達の助太刀に来る等、大和魂を継承している模様。
好物は漬物。
ノルマンディー公。
アンジェ(シャーロット)の実の叔父。王国側の内務卿。
【語句】
コントロールー王国内に侵入する共和国スパイの総元締め。
ケイバーライトー重力制御装置。
→Cボール。
チェンジリング作戦ー共和国側によって考案された作戦。アンジェがシャーロットと入れ替わり王国を内部から崩壊させる作戦と思われる。
【ストーリー】
概要に書かれた文章でプリンセスプリンシパルの世界感はほぼ網羅している。
1~10話においてはキャラの掘り下げ、過去、王国と共和国の思惑を映し、
結果スパイ5人組によるスタイリッシュスパイアクションが繰り広げられるに終始しているので、切実に時間がない人は概要を理解してから11,12話を視聴すればよい。
プリンセスプリンシパルの物語の中心にいるのは、ロンドン革命によって分かたれたアンジェとシャーロット、この二人と言ってよい。その二人に迫るのが11,12話である。
またストーリーの核になるのは、壁を失くそうとしたアンジェの夢を「偽物のプリンセスという嘘で」叶えようとするシャーロットという図に尽きる。
「少女の嘘は世界を変える」というキャッチコピーも存在する程だ。
しかしシャーロット自身は野望に燃えているが、アンジェは11話に2人で駆け落ちしようとしたりしているので、案外シャーロットと2人でいたいという想い以外彼女の頭の中にはないのかもしれない。
ここでは最後に作中の印象に残ったセリフを抜粋しておく。
アンジェ「プリンセス、あなたも覚えているでしょう?私達が初めて会った日の事。私が何処へ行こうとしていたのか。話した事なかったよね。庭の片隅に枯れ井戸があるって聞いて私、消えて無くなるつもりだった。あなたに会えた。人嫌いで怖がりだった私に出来た初めての心を許せる友達だった。革命が起きて全てを失ったけど、私は生きるのをやめなかったわ。あなたにもう一度会いたい。ただそれだけの理由で私は今日まで戦ってこられた。そしてあなたに謝りたかった。」
シャーロット「わたしはまだこの国でやるべき事がある。言ったはずよ私は壁を無くすって。この国には引き裂かれた人達がまだ大勢いる。私がプリンセスである限りここから逃げ出すわけには行かないわ。革命が起きたあの日私は誓ったの。あなたが望んだ世界をこの手で実現しようって。」
イングウェイ少佐「我々はこれより恐れ多くも、女王陛下を打つ覚悟でございます。貴方様に新しい女王になって頂きたいのです。
植民地支配され、この国の労働力の大半を占めながら、最低限の権利しか認められていない。彼らの怒りは必然なのです。」
シャーロット「移民貧困格差、それがあなた達の、理由なのですね」
シャーロット「私が女王となって、国を変えると約束します。
少佐「プリンセス、先ほどあなたの仰った言葉はあなた自身を否定する事になる。本当にこの国を変えられるとお思いなのですか。」
シャーロット「はい、そして私が最後の女王となるでしょう。おそらく断頭台で。私は誓ったんです。あの革命で引き裂かれてしまった友達の夢を叶えるって。わたしは偽物だったけれど、10年この国を見て気がついたんです。私達だけじゃない、見えない壁に引き裂かれた人達が大勢いる。その子が壁をなくしたいって言った時どういう事かわからなかったけど、辛いことや悲しい事がなくなるなら本当にそうなって欲しいと思った。でも私が彼女からそのチャンスを奪ってしまったの。だから私が代わりにこの国を変えるって誓ったんです。」
シャーロット「あなたの心にはいつも見えない壁があった。私、もう一度誓うわ。あなたの心の壁も壊して、みんなの前で笑える日が来るまで絶対に離れない。」
【時代、舞台考証】
⚪︎プリンセスプリンシパルという物語の時代(歴史)の下敷きになっているのは、19世紀イギリスと、20世期後半、統治下の東西に分離されたドイツと推測される。
ヴィクトリア朝(ヴィクトリアちょう、英語: Victorian era)は、ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた1837年から1901年の期間を指す。この時代はイギリス史において産業革命による経済の発展が成熟に達したイギリス帝国の絶頂期であるとみなされている。
帝国主義の興隆
19世紀のイギリスは工業化による生産力の増大により得た、圧倒的な経済力と軍事力で世界の覇権を握った。
Wikipedia イギリス19世期の歴史より抜粋
ベルリンの壁(ベルリンのかべ、独: Berliner Mauer)は、1961年から1989年までベルリン市内に存在した壁である。
東ドイツ当局により建設中のベルリンの壁。(1961年11月20日)
壁の前のブランデンブルク門。左側が東側で右側が西側である。(1961年)
壁による分断を示すベルリンの地図
省略してまとめると、
第二次世界大戦後、敗戦国であるドイツはアメリカ、イギリス、フランス、ロシア)によって分割占領される。
その後、米ソの対立で、社会主義陣営(ソ連統治)に属するドイツ民主共和国(以下、東ドイツ)と、自由主義陣営(アメリカ統治)に属するドイツ連邦共和国(以下、西ドイツ)が成立する。この東西両陣営の冷戦時代に入ってから、東ベルリンから西ベルリンへの人口流出が後を絶たずたソ連と東ドイツは、、東西ベルリン間の通行を一切遮断し、西ベルリン周囲の境界線から少し東ドイツ領内に入った地点に壁を建設した。
以後、東ベルリン市民の西ベルリンへの通行は不可能となり、多くの家族や友人・知人と不意に引き裂かれた。そしてこの後、壁を越えて越境しようとした者が次々と射殺されるなどの悲劇が生まれた。
⚪︎ロンドンの壁はベルリンの壁を基に生み出された言葉であろう。
⚪︎ロンドン革命はもたらされた結果が東西の分断、壁の建設という点では、米ソ対立(冷戦)の結果を基に考えられたものと思われる。
⚪︎作中での使用言語は英語であり、
自動車、
街並みや、霧など
「霧の都」と呼ばれるように年間の霧発生日数が多い。
Wikipedia「ロンドン」より抜粋
舞台になっているのは、こちらは概要の通り19世紀のロンドンと推測される。
⚪︎スチームパンクという単語はわたしはここで初めて知ったが、こんな内容らしい。
スチームパンク(英語: steampunk)は、サイエンス・フィクションのサブジャンルの1つである。関連ジャンルとしてファンタジー、歴史改変もの、スペキュレイティブ・フィクションがある。
1980年前後が勃興期であり、1980年代から1990年代初めごろまで特に人気を博したが、その後もSFの1サブジャンルとして定着し現在に至る。蒸気機関が広く使われている設定で、イギリスのヴィクトリア朝やエドワード朝の雰囲気がベースとなっている世界観である。イギリス以外の国も概ねそれと重なる時代、アメリカでいえば西部開拓時代、日本でいえば明治時代~大正時代頃の近代化を推し進める文明開化から大正ロマンの雰囲気が代表的世界観である。そのような世界観の中にSFやファンタジーの要素を組み込む。ヴィクトリア朝の人々が思い描いていたであろうレトロフューチャーな時代錯誤的テクノロジーまたは未来的技術革新を登場させ、同時にヴィクトリア朝のファッション、文化、建築スタイル、芸術を描く。スチームパンク的テクノロジーとしては、H・G・ウェルズやジュール・ヴェルヌの作品にでてくるような架空の機械、最近の作家ではフィリップ・プルマン、スコット・ウエスターフェルド、チャイナ・ミエヴィルの作品にでてくるような架空の機械がある。
他のスチームパンクの例としては、飛行船、アナログコンピュータ、チャールズ・バベッジとエイダ・ラブレスの解析機関のような機械式計算機といったテクノロジーを歴史改変的に扱うものもある。
本作品では19世紀イギリス、SF、歴史改変といったところか。
【まとめ】
舞台はイギリス(ロンドン)なのだろうけども、冷戦下のドイツをモチーフにしたであろう壁だとか西側とか東側だとかが出てきて正直頭が狂う。
それもひとつのスチームパンクという題材なのだろうけど。
スパイ×スチームパンク×女子高生というキャッチフレーズが掲げられているが、あくまでそれは、ポーズであると思う。
あくまで、オタクを引き寄せるための誘い文句であり、客引きパンダ的カテゴライズに過ぎない。
壁が一つテーマになっているが、それがこの作品の骨であると思う。
もちろん、東西に隔てる物理的な壁という意味も含まれるだろう。
ここからは私の見解だが、シャーロットが作中で言及した見えない壁というのは、
それこそイングウェイ少佐がいうように「移民貧困格差権利」などの強者と弱者の間に引かれるカーストという壁、
主義主張、人種や性別、身分の差
国を治めるものと治められる物との間に生じる壁を指しているのではないだろうか。
一言でいえば、国や社会や主義によって引かれる、人と人を分け隔てる障害=見えない壁ではないかと思う。
シャーロットが抱いた夢というのは安い言葉になってしまうが、自由と平等でないだろうか。
(こう書くと姫様が共産主義みたくなってしまうが…)
もうひとつ、ここからはわたしの突っ込んだ考えではあるが、人と人との間に無意識の間に引かれる優劣における差別(優生思想における命の価値)についての問題も含まれるかもしれない。。
亀甲縛りにされながら演説するシャーロットの言葉に私は思わず涙腺が緩んだ。
こんな姫様が統治する国で暮らしてみたいと思った。
(実際には君臨すれども統治せずなのだろうけど)
そもそも今とは時代も違う、共感することなどないではないかという意見もあろうが、
今に通ずるものがあると私は思う。
今の世界を眺めているとふとそう思うのだ。香港とか
そこまで踏み込んだアニメなのか?という問いもあるだろうが、私はこの作品は
ただの萌えアニメではないと思うのだ。(もちろん黒星紅白氏のキャラ原から生み出されたプリンシパル達は最高)
だいぶ待たされた感はあるが、(劇場版でも)その期待値に応えてくれる作品になると私は確信している。
【あとがき】
『プリンセス・プリンシパル Crown Handler』公式サイト
2017年放映当時は、
「ちせっ!!ちせっ!!」
とかいいながら脳死視聴しかしてなかった気がします。
…いや、それはそれで正しい観方かもしれませんが。
記事にしようと思い、最近観返していたのですが、こんな素晴らしいアニメだったとは…。
。
……ところで、この作品が世間でそんなに浸透してない気がするのは私の気のせいですか?
手放しでほめちぎりたい作品ですが、
今村さんが事務所を退社されているという事実…を経てのキャスト変更。
……
どうしようもないことは理解しています。ただ、
プリプリ秘密レポート(ラジオ)とか聞いてたShijyoとしては、声がもう二度と聞けない事を思うと寂しくて仕方ありません。
もう関根さんとかが一人二役(アンジェ兼任)する方がまだ寂しさが薄れるってもんですよ(暴挙)
声優のリリーフで寄せるのはあれは何なんですか?
古賀さんには何の非もないのですが、似ていれば似ているだけ欠乏感が増すというものなのです。
しかし映画を見終わった後にはぜひともありがとうと言える自分でありたいです。
面倒くさいオタクだなしかし。